虫歯の逆襲 〜序章〜
歯が痛い
そう、歯が痛い。
25年間甘党として人生を生きてものにとって、糖分は切っても切れない腐れ縁の不良の大親友のようなモノである。それはそれはドンピシャの文字通りに甘えてしまっている。甘えてしまっているがゆえに、この糖分という大親友が、とんでもない友人を連れてやってきても家に入れるのを断ることのできないのである。
糖分のとんでもない友人とは、そう虫歯だ。
今僕は、過去に一度、克服したもののまた彼と戦わざるをえなくなってしまったのである。
虫歯の逆襲である。虫歯リターンズである。
発端は先日、僕がジャケ買いしてしまい、以降、完全に虜にされてしまったわるきー、、、もといミルキーの新商品、魔法のミルキーを食していた時のことであった。
ミルキーの味覚はそのままにそのソフトな食感と中から溢れ出るカシスの風味に酔いしれていたのであるが、途中で違和感を感じ、口から出すと、そのミルキーに僕の差し歯が繭をまとっているかのごとく、包まれていたのである。
この取れてしまった差し歯は前歯である。まあ、前歯とはいえ、僕の歯でWセンターを担っている二本の歯はしっかり健在である。念のため。
取れた前歯は乃木坂46でいえば、橋本奈々未や生田絵梨花が担っているポジションであり、将棋でいえば金将のポジションである。ここが欠けるとビジュアル面でも、守備の面でもかなりのハンデを背負ってしまうことになってしまう。
僕は取れた差し歯をカポっとはめ、ことなきを得たのであるが、いかんせん一度取れてしまった差し歯は取れやすくなっているため、すぐに取れてしまうのだった。
何度よりをもどそうとしても結局うまくいかない別れたカップルのような関係になってしまった。悪いのは僕のせいだ。いくらミルキーの誘惑があったとはいえ、大事にしていなかった僕のせいだ。なんど元どおりになったと思ってもすぐに離れていってしまう。ある種の空虚な感覚に襲われてしまう。
ここで一つ白状おかねばなるまい。僕は一度取れてしまった差し歯がスポッと取れることがいつのまにか快感になってしまっていた。そして、ついつい自分でスポッと手で抜いてしまうのだった。おい!やっぱり自分のせいじゃないか。
自分の手でついつい抜いちゃうなんて思春期の中学生じゃあるまいし!
かくして、僕は落ち度100パーセントの状態で歯の痛みに苦しんでいる。まぎれもなく自業自得である。
明日は歯医者の予約を入れた。僕はウィイイイイイイイインとかキイイイイイイイイイイイイなどと人間が不快に感じるようにしかできていない音を聞かなければいけないのだ。
さあ、本当の地獄はここからだ。